用語解説

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超歌舞伎を楽しんでいただくため、「積思花顔競」(つもるおもいはなのかおみせ)に登場する用語のご紹介をいたします。

・長唄 ながうた
歌舞伎の伴奏音楽のひとつ。唄方と三味線方で構成される。三味線は繊細な音色の細棹三味線を使用する。今回の作品では、超所作事、発端の骨寄せ、第一場の初音姫の踊り、第三場の羅生門、さらに大詰で使用される。

・竹本 たけもと
歌舞伎の伴奏音楽のひとつ。ナレーターの役割を果たしており、その場面の状況や登場人物の心理などを説明していく。語り手の太夫と三味線で構成される。三味線は重厚な音色の太棹三味線を使用する。第四場の白鷺の精霊の登場の場面と大詰で使用される。

・勅使 ちょくし
天皇からの使者のことをいう。惟喬親王は天皇の位に就いていないが、天皇同様の立場にあるということで、家臣の秦大膳は勅使として安貞のもとへ惟喬の命を伝えに現れる。

・山車 だし
祭礼の際に装飾して引き出される車のことで、曳き手に曳かれて町内を練り歩く。超所作事でミク演じる初音家おミクが山車に乗って登場する。

・大向こう おおむこう
本来は舞台から最も遠い観客席を指す。この席に集う観客は芝居通が多く、大向こうから屋号を良い間でかける人が多数いたことから、現在では屋号をかけることを大向こうと称するようになった。

・骨寄せ こつよせ
野ざらしとなって散らばっていた人骨が、すいよせられるように集まり、やがて一体の人の形となる演出を指す。古くからある歌舞伎の演出で、発端の惟喬親王復活の場面で、この演出が用いられている。

・羅生門 らしょうもん
平安京の南端にあった正門。都の外れにあったこともあり、早くから荒れ果てて、その階上には鬼が棲むという伝説が生まれた。惟喬親王がこの門を仮御所としているのも、こうした伝説をふまえたものである。

・還御 かんぎょ
天皇などが外出先から帰ること。今回の作品ではあの世から現世へ惟喬親王が戻ることを指す。

・八咫の鏡 やたのかがみ
三種の神器のひとつで、日輪を象徴した鏡。天照大神が天の岩屋に籠った際に、大神を外へ連れ出すために作られたと『古事記』や『日本書紀』は伝える。

・報謝 ほうしゃ
諸国をめぐる順礼に布施を与えること。今回の作品の羅生門の場面の原典である『楼門五三桐』では、順礼姿の真柴久吉に石川五右衛門が布施の代わりに手裏剣を投げつける。これをふまえて惟喬親王が小野初音姫に手裏剣を投げる。

・夜陰 やいん
夜のくらがりを指す。

・庭守 にわもり
庭の番人のこと。惟喬親王は八咫の鏡がある御所の奥深くには近づけないために、庭守に姿を変えて内裏に忍び込んでいるという設定になっている。

・冥府 めいふ
あの世のこと。冥土とも。

・神宝 かんだから
神の宝のことであり、三種の神器の八咫の鏡を指す。

・威徳 いとく
自然とそれに従わざるを得ない徳のこと。八咫の鏡の持つ力を指す。

・みそひと文字 みそひともじ
三十一文字とも記す。五・七・五・七・七の和歌のこと。

・巫山の昔 ふざんのむかし
中国四川省にある山のことで、楚の懐王が夢の中に現れた巫山の神女と契りをちぎった伝説で知られる。巫山の昔とはこの伝説を指す。